サンデー毎日2007年7月22日号に掲載された『牛肉、マグロ…「食」壊滅!?業界人がこそっと明かす「食べてはいけない」リスト(本誌・藤後野里子)』に機内食についても写真付で記載がありました。
『「スッチー」が食べない機内食』と。
本当にに取材したのか? 不安をあおるだけの報道
今更、記事の内容について批評するのもどうかとも思いましたが、「食」の安全について感心が高まっている中、ろくに取材もしないで不安を煽るような記事を掲載するのもいかがなものかと思い、あえて紹介することにします。機内食の部分の内容は次の通り。
『自分のところの商品を食べない、という意味では飛行機の機内食もそうだ。
「昔は、乗務員はビジネスクラスの機内食を食べていましたが、それでも私は食べませんでした。やはり何十時間も持たせるような防腐剤が入っていて健康に良いわけがない。お弁当を持っていっていました。(元スチュワーデス)』
思わず、笑ってしまいたくなる内容です。
「乗務員は機内食を食べない」ということをたった一人の元客室乗務員の証言を元に書いていますが、コックピットに近い座席を取るとわかると思いますが、ちゃんと、操縦室にも機内食を届けてます。食べ終わった後の片付けもありますから、食べてるのは容易に確認できます。
また、これは、特定の航空会社に限られるかもしれませんが、ギャレーで機内食を食べている客室乗務員も目撃します。
私も良く利用しているユナイテッド航空で、ギャレー付近で機内食のスナックをつまみながらフライトアテンダントとおしゃべりした経験もあります。
食べない人もいるでしょうが、それを乗務員の代表のように取り上げるのはいかがなものでしょう。
それ以外にも矛盾があります。
『機内食は何十時間も持たせる防腐剤が入っているので自分は弁当を持っていっていた』というところ。
機内食は防腐剤を使わなければ持たないのに、弁当は何十時間経っても平気というちぐはぐな内容です。
機内食への添加物のポリシーは航空会社毎に異なります。
冷却して保管※されている機内食と常温で保存されているお手製弁当。
安全性という観点では添加物を使用していなくても一定時間経過後の雑菌数は機内食のほうが間違いなく低いでしょう。
※機材・路線によっては常温保管となります
以前、日本で調理工場にお邪魔したことがあります。
普通の家庭で作る弁当やおむすびと違って、温度管理がきちんとされているので、そもそも防腐剤を大量に使う必要はありません。
機内食に限らず、販売用弁当などの調理の場合、調理後に冷却する工程があります。
これは、温度が高いままだと雑菌が繁殖してしまうためにそれを防止するために行っているのですが、機内食の場合、機内で再加熱する場合が多く、この冷却温度がコンビニなどの弁当に比べて低めになっており、その定温をサービス直前までキープしています。
また、調理過程も一般家庭での調理と比較すると食品に直接手を触れないことはもちろん、かなり厳しい基準をクリアしています。
美味しい、美味しくないはともかくとして、機内食=危険というイメージには賛成しかねます。
今回の記事、機内食だけでなく、成形肉、ハム、パン、米、魚など、多岐にわたっています。
例えば「パン」の記載にも、取材先のパン工場の従業員の言葉を引用する形で『「イーストフードを使っている菓子パンは発がん性部室の宝庫。絶対食べない」』としているところ。
イーストフード自体には14種類あり、発がん性が問題とされたのは「臭素酸カリウム」についてです。
パン工場の従業員の言葉を引用することで、記事の信頼性を上げようとしているのでしょうか。
でも、そのような発言をした従業員は添加物についての知識はあるのでしょうか。
ちなみに現在では最大手で「臭素酸カリウム」を使用していたヤマザキパンも使用をしない製法に変わりました。
今回のサンデー毎日の記事。
取材対象を広げすぎ、個々の内容は薄っぺら。消費者心理につけこんだ記者の自己満足記事といえるでしょう。
「○○してはいけない」シリーズの書籍や雑誌記事は執筆者の思いこみが激しく反映される
サンデー毎日ではありませんが、正露丸の主成分には木クレオソートというものがあります。これは石炭から生成される(コールタール)クレオソートとは全く別物。学術的には木クレオソートの安全性が確認されてかなりたってから出版されたのにもかかわらず、木の電柱の防腐剤が主成分と記載されているものもありました。
また、かつお風味調味料についても、かつお削りぶしとかつおぶし削りぶしをごちゃごちゃにして記載されていました。枯ぶしかそうでないかの違いなんですが、どちらを原材料にしているのか、全くわかりませんでした。
出汁についての検証記事を書くならこのくらいの知識は必要です。
機内食に限らず美味しくて安全な食品が提供されることが一番ですが、不必要に不安を煽る低俗な情報にも惑わされないようにしたいものです。
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